2015/06/28

インドでは列車に乗るのもひと騒ぎ



onlypicsfine.comより

失恋したら旅に出たくなる私は、とある年のとある日に、"ブルーシティー"として知られるジョードプルに一人で観光に行くことにした。

時 間とお金を有効活用したいので、ジョードプルへデリーから飛行機では行かず、夜行列車で行くことに。夕方6時半頃にグルガオン(デリーの近く)駅から出発 し、11時間ほどかけてジョードプルに朝5時頃に着く予定。しかもこれが安い。私がいつも選ぶ2等(AC)席だと片道1300ルピー程度、約2600円。

2 等(AC)席とは、エアコン付きの2段ベッドがある+通路がカーテンで仕切られている車両だ。ちなみになぜ1等車両を選ばなかったのかというと、1等 (AC)車両になると、個室になるのだが、結局その個室を数人で シェアする形なので、一人で列車に乗ると気まずいのだ。そして、ちょっと見た感じだと、個室のドアが鉄格子のような感じで何とも刑務所らしいのだ。しか も、値段も高い。同じ区間で1等席を選ぶと、2000ルピー程度、約4000円となる。なので私はいつも列車に乗る時は2等車両と決めている。

イ ンドの鉄道駅は非常に不衛生だ。おしっこの匂いで包まれている。数年ぶりに夜行列車に乗るのだが、まあ、私もよくこんなところに一人でいて、これから列車 に乗れるものだと、自分で自分に呆れ、少し惨めな気分になってくる。数年前は学生だったからこんなちょっとリスキーな場所にいても若気の至りとして許され たかもしれないが、もう社会人なんだから何で好き好んでこんなところにいるのかと。

それはいいとして、ところで、インドの鉄道の乗り方は非常に難しい。

購入したチケットには何番の何等席の車両の何番シートなのかが記入されているのだが、車両には何番だと書かれていないのだ。正確に言うと、何か数字は書かれているのだが、全く席のランクと一致していないのだ。

周りの人たちに聞いても、この等の車両なら、前側だろう、後側だろうと、意見がバラバラで、よく分かっていない様子。議論好きで目新しい物好きのインド人たちは、外国人の私の周りでワーワーと意見を言い合っているのだが、全く役に立たないのである。

と りあえず比較的お金持ってそうな見た目で、自分と同じように値段が高い席のチケットを購入した人たちの近くで列車を待ったのだが、いざ列車が来た時には、 やっぱり自分の席がある車両はこれではないのではないかと、あたふたと急いで前に後ろにウロウロするのである。通常列車は駅に到着したら5分くらい停まる らしいのだが、その時は違った。

たった1分程度で列車が動きだし、まだ自分の車両が見つからない私は、とりあえず急いで動き出した列車の一番近くのドアから乗り込むのである。

おっとっと。

相当違う車両に乗ってしまった。

中は人でギューギュー。私の後からも誰かが乗ってきて押してくる。

これは、インドの列車と言えば多くの人が想像する、もしくは、バックパッカー外国人が好んで乗り武勇伝を作ろうとする、あのエアコン無しのスリーパークラスの車両に違いない。

車両と車両間を移動できるドアらしきものがあったため、開けて移動しようと思っても、開かない。何のためのドアなの?!

このまま乗車率何百パーセントの混雑した場所で11時間も乗り続けるつもりはもちろんない。私は車両の中に押し込まれないように、誰かに助けてもらうように、なりふり構わず、列車のチケットを握りしめた拳を振り上げ、

「私の2等席車両はどこーーーーーー!?!?」

と騒ぎ立てる。

私はちょうどその時インド人男たちに囲まれていたのだが、この男たちが良い人たちだった。2等席車両の場所についてあれこれ相談してくれている(のだと思う)。彼らがヒンディー語で相談している間にも、私はお行儀悪く、「私の車両どこ?ど こ?」とあたふたしている。そのうち一人の英語を話せるインド人男性が、ドアのない列車の乗車口の外へ手を出し、前を示して、「あっちにあるよ。15分で次の駅に 着くから、その時に移動するといい。そこにいる人が車両を案内してくれるよ」と言ってくれ、私は後ろを振り向くと、また違うインド人男性が「へいへい」と頷く。

次の駅に到着し、インド人と私は今いる車両から降り、私はインド人について行く。「列車がすぐに出発するから、走れー」と走っていき、私も走る。

(こやつを信じていいのか?)と疑問に感じながらも、走る。

数車両分走った後、インド人は「ここだよ!」とその車両を指す。私はありがとうと言い、乗り込むのである。

乗り込んだ車両は・・・ビンゴ。

さっきみたいにギューギューではなく、数少ない乗客たちが十分なスペースがある場所でくつろいでいる。私はどうやら、自分の車両に辿り着いたようだ。

ふぅ。

実は私は知っているのだ。
ギャーギャー騒いで困ったアピールをすれば、必ず誰かが助けてくれると。

だって、ここはインドだから。インド人はお節介焼きで、実は優しいから。

"求めよ、さらば与えられん。"

それが通用する国と人たち。"阿吽の呼吸"が通用しない国と人たち。

そっちのほうに心地よさを感じてきているのは、事実である。

・・・・・でも。

もう列車には乗りたくないかな。だって、車両の中でも、2等席クラスでも、おしっこの匂いがするんだもの!!!

【おまけ】
 インド映画の中の列車のシーンで有名なのがこちら。



1998年公開の"Dil Se Re"という映画のミュージックシーン"Chaiyya Chaiyya"。勢い良く走っている列車の上で俳優さん&エキストラたちが踊っているのは、CGではなく、実写だとのこと。すごい!!



2015/06/19

無意味だったかもしれないクレーム




「これ、タンドリー・ロティじゃない!これチャパティなんだけど!何でチャパティ?私が頼んだのはロティ!チャパティではないの!」

私はいつも通り、怒りを表現するために声を荒げていた。

レストランで、タンドリー・ロティというインドのパンを持ち帰り用に頼んだのだが、今レストランはオープンしたばかりで、他の店から買ってくるから待ってくれと言われた。

10分くらい待つと、誰かが紙袋に入ったインドのパンを持ってきた。

ちょっとお腹が空いていたので、一口食べる。

・・・・・・・ん?私の知ってるロティの味がしない。この味は・・・チャパティ。
パンを見てみると、見た目もチャパティ。

私が知っているロティは、見た目は花びらが何枚も重なったようなパンで、味もバターのまろやかな味がするのだ。

でも、今私が受け取ったのは、見た目が平べったく、粉の味が強いチャパティ。

私が強い口調で指摘をすると、インド人男性スタッフたちは、口々に意見を述べる。

「いや、これはロティだ」

「いや、これはチャパティだ」

「いや、そもそも君が頼んだのはチャパティだ」

「いや、これはロティだ」

「いや、君が頼んだのはチャパティだ」

「いや、これはロティだと思うよ」(←おいっ!)

言いたい放題言わせておけば、好き勝手なことばかり言うんだから、もう!

「“思う”って何よ!あなた、インド人でしょうが!インド人なんだから、チャパティとロティの違いくらい、知ってるでしょ!私が外国人だから、味の違いがわからないなんて思っていたら、大間違いだからね。私、チャパティの味が嫌いなの。しかも、私この前ここのレストランに来た時に同じタンドリー・ロティを頼んだけれども、こんな見た目じゃなかったもの。今すぐ変えるか、払った50ルピー返してちょうだい!」

なぜかクレームを付けているときが、一番英語がスムーズになる。
ああ、私は完全なるクレーマー。

「いや、ちょっと待ってて・・・・」

という言い訳を遮り、「それだったら、すぐにお金を返してちょうだい!」とピシャリ。

本当はそこまで怒ってはいないのだけれども、私の迫力に圧倒されたのか、「ははー、ただちに返金いたしまする」とインド人。

超高飛車な女帝のごとく、その場を立ち去る私。

家に帰ってから、ちょっとだけチャパティとロティの違いに疑問を持って、Googleで検索をしてみた。

チャパティとロティ、それぞれGoogleイメージの写真で見てみたら・・・・

えーっと・・・

違いが、よくわからない。

Googleで見つけた、タンドリーロティ

Googleで見つけた、チャパティ

私が頼みたかったもの。どうやら、パラタというらしい・・・

もう少し調べてみると、チャパティは全粒粉だけを使って発酵させないで鉄板で焼いたもの、ロティは強力粉と全粒粉を使ってイーストで発酵させたものらしい。

が、ある人は、チャパティとロティは同じだと言うらしい。

・・・・・・・

あーあ、またやっちゃった。

また私の勘違いで勝手にクレームをつけて、わがままを通して、周りのインド人たちを圧倒させちゃったのかもしれない。

でも、たとえチャパティとロティの違いが曖昧だったとしても、やっぱり、私が同じレストランで前に頼んだロティとは、違かったもの!やっぱり、同じメニューを頼んだら、同じ料理が出てくるのが当たり前だもの!

そう自分で、怒った理由を正当化する。

クレーマー、クレーマー。
少しは、気をつけないと・・・

でも、あの私が食べたかったバター風味の花びらの形をしたインドのパンの名前は、一体何て言うんだろう?

気になる。

2015/06/12

インドだって、「オシャレ物件」だったら日本になんか負けてない




ただ家賃と立地と広さだけを考慮に入れた物件探しから、デザイン性・個性も重要視して物件探しをする人たちが、少しずつじわじわと日本の表に現れ始めたらしい。

部屋のデザイン性にこだわりたい私としては、とても歓迎すべきことだ。だって、日本でオシャレな空間を持つ物件を見つけることは、とっても難しいもの。

ちなみに私の実家は一軒家。外見まあまあ広そうなお家なのに、中はなぜか狭く感じるのだ。変な間取りのせいで、リビングも寝室もキッチンも狭いし、天井が低過ぎてさらに狭い。どういう理由で、こんな間取りになったの?といつも私は文句を言っていた。

そんな狭い家から離れるために、一人暮らし用の物件を探していたけれども、やっぱりどこも狭くて、オシャレではなくて、どこも似たような味気ない部屋だった。本当に、自分が住みたい!と思える物件は見つからなかった。

そんな狭くて味気ない物件に不満を持っている人たちの手助けとなる、「オシャレ物件」「ユニーク物件」だけ!!を集めた不動産サイトが日本で注目され始めているらしい。

例えば、 『東京R不動産』(http://www.realtokyoestate.co.jp/)。結構この不動産サイトは昔からあったみたいだけれども、特に最近勢いづいているみたいだ。だって、最近、東京テレビの「ワールドビジネスサテライト」で取り上げられていたもの。ただ単にオシャレ物件を集めているだけではなく、その紹介を丁寧にしているところが売りらしい。

『東京R不動産』サイトから切り抜き(2015年6月現在)

この物件、すーーーーっごく素敵!買いたい!買えるなら!

オンラインショッピングサイトでファッションのウィンドウショッピングをしている時のように、こんな素敵な物件が集まる不動産サイトをただ眺めるのは、すっごく楽しい。

いつか私が日本に帰ったら、こういう味のある物件に住むんだ!物件を決めてから、仕事を探そう!と本気で思っている。

とは言っても、分かっているのだ。現実問題、日本に帰っても、そんなに魅力的な家には住めないと。だって、魅力的な家は、家賃が高いもの。

そう考えると、私が今いるインドはなかなか悪くない。なかなかの「ユニーク物件」に出会う確率が、日本よりもあるのではないかと思う。

あ、「ユニーク物件」と聞いて、あなたは、


こんな中での生活が外様に筒抜けになるようにできている、壊れかけの(もしくは作りかけの)家だとか・・・


いつ、何かがあっても全くおかしくない、ハラハラドキドキのお家を思い浮かべたでしょう!!

違うから!!!(まあ、そいうのも、たーーーーくさんあるけど・・・)

インドには、意外にも、内装がオシャレな物件が、ちゃんと探せばある。

例えば、今私が住んでいる物件。家賃約5万円のスタジオルーム(一人暮らし・カップル用の物件。インドで探すのはちょっと苦労する)だけれども、日本で同じ額だけ払って借りられる部屋と比べたら、圧倒的に広いし、付属品も充実しているし、そしてオシャレ。

お家の玄関。デザインはヨーロピアン風でオシャレだけど、実は問題があり・・・

天井まで伸びている収納ラック。この物件の決め手になった一つ。
 こんな感じ。

部屋は1フロア全部を使っていて、部屋の中にミニ階段がついているから、空間に立体感が出ていて、独特な部屋作りとなっている。インドではよくあるのだが、ベッドやエアコンやソファーなど全て最初から備わっていて("Furnished apartment"という)、そのセンスもインドでは運がいいことに、統一感があってなかなか洗練されているので、ほぼ全てにおいて、私の完璧なお部屋なのだ。

”ほぼ”というのは、やっぱり問題点も結構あるから。

インドは結構家の見た目にはこだわるみたいだが、家の構造だとか機能性を重要視していないらしい。

そのおかげで、家に隙間があって、外から塵が入ってきて毎日掃除しなければいけないし、毎日ヤモリさんに遭遇する羽目になる。そして、1週間に1回程度はにっくきゴキブリ様にもお会いする。

しかも、ドアはオシャレだけれども、ガラス素材を使っているから、泥棒がドアを壊して入って来れるようになっている。セキュリティーが最悪なのだ。

それに、停電もあるし、水の質も悪いし・・・(これは家の作りの問題ではないけど。)

でも、そんな不都合があっても、私は今の家が好きだ。インドにも高層マンションがあって、まあまあ建物の作りがしっかりしているマンションもあるけれども、"清潔"ではあるかもしれないが、"オシャレ"ではないところが多い気がする。私はあえて、機能性よりもデザイン性を重視します、ここインドでは。

さて、そんな「オシャレ物件」をインドでどう探すのか? ー これは、日本同様難しい。特に外国人にとっては。私もインド生活半年経った頃から、ようやく物件探しが分かってきた感じだ。

インドでの「オシャレ物件」の探し方、その1:高級住宅地にある物件を探す

例えば、デリーだったらDefence Colonyだとか。高級住宅地にある家は外観からオシャレだし、中もきっとオシャレ。

インドでの「オシャレ物件」の探し方、その2:ネット検索

もちろん、インドにも不動産サイトはある。でも、実際に見学に行くまで、信用はおけない。し、見学の問い合わせをしても意味不明なことが多々ある。

それでも根気よく探せば、いい物件にありつけることもある。

そんな物件に出会えそうな不動産サイトは、例えば、「Magic Bricks」(http://www.magicbricks.com/property-for-sale-rent/residential-real-estate?hpr=LOGO)だとか、「Housing」(https://housing.com/in)。

『東京R不動産』のようなサイトはインドで多分ないだろうけれども、インドのサイト「Housing」は、ちょっと近いのではないかと思う。

(本来であれば当たり前なのだろうが) 検索しやすいし、写真もちゃんとあるし、サイトもモダンな感じ。そして、掲載されている物件の写真を見ると、なかなかオシャレな部屋が多い!

例えば、こんなの。

『Housing』サイトから切り抜き(2015年6月現在)
1LDKで家賃15万円は高過ぎて私には手が届かないけれども、でももし会社のお金で借りられるんだったら、ここに住みたいなー!ホテルのスイートルームみたいだもん!

こんな感じに、「オシャレ物件」が『Housing』には多い感じだが、気をつけないのは、バックアップ無しの物件が多いということ。どんなにデザイン重視の私でも、さすがに停電したときのバックアップがないという機能性最悪の場所には住めない。

ということで、インドでの物件探しには注意と苦労が必要。。。。でも、「オシャレ物件」に出会ったときの感動は、日本以上。


と、終わりたいのだけれども!!!最後にこれだけは言っておきたい。

西側の芝生は青すぎるーーー!!!

何が言いたいかというと、私は知ってしまったのだ、ドイツの家賃はもの凄く安いと。月400ー500ユーロで借りられるらしい。そしてもちろん、日本の家より広いらしい。

400ユーロと言ったら、約5万円。今の私のインドの家賃と同じ。インドの物価から考えたら、5万円とか高いのに、それと同じ値段で、本場ヨーロピアンのお家に住めるなんて、ずるい!

インドでは、停電とかゴキブリとか塵とかで悩まされて5万円なのに、そんな問題無しに5万で家が借りられるドイツ在住者、ずるい!

ドイツに住める方法を今から考えなきゃ・・・・・

【関連リンク】
突然ですが、インドに引っ越します  

2015/06/09

映画『新しい靴を買わなくちゃ』に共感する10のこと





(※完全なネタバレになるので、ご注意ください。というよりも、映画を観てから読まないと、以下、何について書いているのか理解できないです。)

パリに2日間だけ旅行をしてから、観てみたかった日本の映画『新しい靴を買わなくちゃ』(2012年公開)。

どういう話かは知らないけれども、パリで出会った男女を描くラブコメディーだということは知っていた。

観てみると、ストーリーはこんな感じ↓↓↓

妹 に強制的にパリへの旅行へ連れてこられた、カメラマンのセン(演:向井理、以降『向井理』) は、なぜか妹に置いてけぼりにされ、路頭に迷っていた。そこで、「コントか!!」とツッコンでしまうシチュエーションで出会ったのが、パリ在住で日本人向 けフリーペーパーの編集長をしている、(なんだか情緒不安定のような)アオイ(演:中山美穂、以降『中山美穂』)。現実ではあり得ないようなシチュエー ションによって、2人はパリで3日間一緒に過ごし、お互いに惹かれあっていく・・・が、向井理は帰国日にパリに留まることをせずに、妹とともに日本へ帰っ て行った・・・という最後は現実的な感じで幕を閉じるストーリー。

物語の説明に、個人的な解釈を入れてしまって、ごめんなさい。。。

でも、本当にツッコミどころ満載な映画だった!!

だって、中山美穂が向井理が落としたパスポートに躓いてもの凄く変に転んでいるところを助けたのが出会いだなんて、絶対ない!

しかも、この時の中山美穂は完全に情緒不安定なおばさんなのに、向井理が興味を引かれるなんていう設定も、強引すぎる!

それに、ところどころ向井理の妹とその彼氏のストーリーがちりばめられているのも、何なんだ?!という感じ。(ここでは、妹とその彼氏のことについては全く触れませんのでご了承ください。)

でも、そんな批判は他のサイトでも読めるので、とりあえず置いといて。

代わりに、そんなツッコミどころ満載のストーリーの中で、いち海外在住者として(まだまだ私は新米だけど)、また、いち旅行好き人間として、妙に共感してしまう、現実でもあり得る点をご紹介。


1. 日本人向けフリーペーパーというのは存在する


だから、中山美穂がフリーペーパーの編集記者っていうのも、なきにしもあらず。


2. 日本人の微笑みは、時には"拒絶"という意味である


フリーペーパーの記事の題材となるイースターエッグに関する取材で、 フランス人のパティシエをインタビューしに行った中山美穂。記事の写真はイースターエッグのみにしようと思っているのに、パティシエは「自分も一緒に写っ たほうがいいだろう?」とポーズをとり始める。必要ないけれども、仕方なしに写真を撮る中山美穂の微笑みは、まさに拒絶そのもの。邪険な態度にならずにや んわりと断っているつもりで、日本人は微笑むのだと思うけれども、日本人からしてみれば、結構あからさまで逆に失礼な態度ではないかと思う。でも、そん な"拒絶"を意味する微笑みを外国人は理解していないだろうから、構わないのかもしれないけれども。



3. 海外在住が長くなると、生粋の日本人と話す機会があると嬉しくなる(人もいる)


向井理のパス ポートを踏みつけてボロボロにしたくせに、「私忙しいから行かなくちゃ」と 名刺を渡して行ってしまった中山美穂。(この時に中山美穂のハイヒールの踵が取れて、"新しい靴を買わなくちゃ"となる。)そんな忙しそうな中山美穂だか ら、向井理から「パスポート何とかなりそうです」という留守電をもらった時、そのまま、「そうか、よかったわ」とし、そのままにするかと思いきや(まあ、 ここでそのまま終わりだとストーリーが展開しないのだけれども)、電話をかけ直し、わざわざ丁寧に、もの凄く楽しそうに、道に迷ったままの向井理をホテル まで音声ガイドをしてあげる。しかも、ちゃっかり自分もホテルに向かい、向井理をお出迎え。

普通、パスポートをぼろぼろにしちゃったからと、ここまでするかしら?しないと思う!

実は中山美穂は、もの凄いお人好しだったから?—いや、違う。

これは絶対に、"日本から来た日本人"に久しぶりに出会って、舞い上がったからだ。

パリ在住の日本人って結構いるけど、中山美穂はあんまり日本人に関わっている感じの役柄ではないし、 それに関わっていたとしても、海外在住の日本人って、"日本に住んでいる日本人"とは、ちょっと違う。

だから、"日本から来た日本人"と接すると、何だか新鮮、ワクワク。

それに、道に迷っている人を助けている私って、ちょっとカッコいいかも、なんて思ってしまう。


4.しかも、その日本人が異性だったら、もう少し一緒に長く過ごしたいと思う(人もいる)


特に中山美穂みたいに、海外で独り身だったら。今生きている世界で、何のロマンスもなかったら、外の世界からやってきた人とのロマンスに期待してみるのも、いけないわけではないはずだもの。


5. そんな時にどうすればいいかと言ったら、一緒にご飯に行った時に、酔っぱらったふりをして、家まで送ってもらうに限る(ご飯にまで誘うことができたなら)


だって、酔っぱらった人を置いてけぼりにする冷たい人なんていないでしょ?


6.  海外在住が長くなれば長くなるほど、日本には帰りづらくなるし、帰っても浮いてしまうんだろうと分かっている。でも、それでも日本に帰りたい思いはある


酔っぱらった(もしくは、酔っぱらったふりを完璧に成し遂げた)中山美穂は、向井理にタクシーで送ってもらい、住所を聞かれた際に、パリの住所ではなく、日本の住所を口にする。そして、「日本に帰りたいなー。東京タワー見たいなー」と。

この中山美穂、もうパリに長くいすぎて、もう日本に帰っても馴染めない感で包まれている。多分、自分でも、日本に馴染むのは難しいと分かっているだろう。

それでも、やっぱり故郷は故郷。どんな場所であっても、自分が離れることを決めた場所であっても、やっぱり故郷に対する愛着はどこかにある。


7. 海外在住者は何かしらの人には言えない大きな悲しみを抱えている(人が多いはず)


中山美穂の人には言えない(出会って間もない向井理には言っちゃったけど)大きな悲しみとは、若かりし頃にフランス人と結婚&離婚を経験し、一人で育ててきた息子も早くに亡くしてしまったという過去を背負っているということ。

こんな話の展開になってしまうと、今までのご都合主義的なストーリー展開も、それまで何だか怪しい動き方、話し方をする中山美穂のこともすっかり忘れて、というよりも、この言動の裏にはこういう過去があったのかと納得してしまうほど、中山美穂に共感してしまう。

だって、こういう何かを抱えている人がいること、知っているから。

何を抱えているのかは知らないけれども。

自分で選んで海外に出て行った人たち、自分の意志ではなく海外に来てしまった人たち、それぞれ、自分の生まれた国に居続けていれば持つ必要もなかったもしれない、それなりの覚悟と、思いと、経験を持っている。

特に、この映画の中山美穂みたいに、自分の意志で海外に出て行った人たちは、それなりの、(自分の国を出て行った)人にはなかなか理解してもらえない理由を持っているし、ある意味いばらの道を歩んでいる。

でも、そんな自分のことを語っても仕方がないから、普通は何も語らない。

8. 旅行中で思い出に残るのは、どこに行って、何を見たか、ではなく、誰と何をしたか



こ の映画の舞台はパリだから、パリの街並み・観光名所が登場するけれども、正直あまりそういうパリの街並みとかが印象に残らない。なんだか、申し訳ない程度 に、「とりあえず、パリの街並みも映像に追加しておきました」っていう感じ。だって、中山美穂と向井理のやり取りが、ほぼ室内で展開されているのだもの。 最初と最後だけ、観光している感じ。

だから、正直、この映画の物語はフランスのパリでなくてもよかったんだと思う。

イタリアのローマでも、インドのデリーでもよかったのだ。(うーん、デリーが舞台だと少々状況を変えないといけないかもだけど・・・)

向井理が日本に帰って、友達に「パリはどうだった?どこが良かった?」と聞かれた時、まず思い起こすのはセーヌ川でも、エッフェル塔でもなく、中山美穂である。

自 分は彼女に出会って恋に落ちた。彼女に出会った場所は・・・そう、セーヌ川のほとりだった。 彼女に電話越しでガイドしてもらいながら、ホテルまでの間に凱旋門も見たなあ。パリ滞在の最後の日は、彼女の一番のお気に入りの場所、エッフェル塔をボー トの上から見たっけ。。。

こんな感じ。

もちろん旅の思い出の中に、行った場所 は登場するけれども、それは二の次。強烈な思い出はいつだって、「何をしたのか」。そして「誰と過ごしていたのか」。場所はその引き立て役である。どんな に美しい場所だって、美しい建物だって、「美しいな」と感じさせてくれるけれども、それだけ。(もし、あなたがアーティストだったら、もっと違うインスピ レーションを得られるだろうが。)普通の人は、そこにある存在・事実よりも、ストーリーに心を掻立てられるのである。

9. 旅行中の出会いは、所詮、非現実的なひとときの中での出会い


まさかまさか、この映画の結末は、向井理がそのまま帰国するという、現実的すぎる展開で終わってしまう。でも、向井理が日本に帰ったのは、全くもって正しい。

だって、旅行ってある種の現実逃避だもの。

そんな非現実的な中での出会いは、所詮、非現実的なものだもの。

い くら3日間、お互いに電撃的で、運命的な時間を一緒に過ごしていたとしても、あまりにも今まで生きてきた世界が違いすぎる。たとえ3日間の中で、向井理が 中山美穂の過去を知ったとしても、やっぱり中山美穂に恋に落ちた理由がよくわからない。逆に、中山美穂が向井理に恋に落ちた理由もよくわからない。端から 見ると、お互いに個人を好きになったのではなく、非日常的な存在に対する憧れに恋したのではないかな、なんて思ってしまう部分もある。

もしくは、ある意味、限られた時間の中での出会いだったから、3日間だけでも2人は近い関係になったのかもしれない。終わりがあることは分かっているけれども、それでも一緒にいたいというような。

きっと、非現実的なシチュエーションだったから、非現実的な展開を繰り広げられたのかもしれない。

10. そんな非現実的なシチュエーションでの出会いでも、現実を生きる上では大切な出会いとなりえる



この映画の結末で私が思い出したのは、私が大好きな映画『ローマの休日』 。親善旅行先のローマで宮殿から抜け出した王女のオードリー・ヘップバーンは、一緒に時間を過ごした新聞記者に恋に落ちるも、最後には駆け落ちをせずに、 もとの生活に戻ることに決める。なぜなら、自分が戻らなければいけない場所があるから。

でも、オードリーは映画の最後で、こう言う。

「私が生きている限り、ここ(ローマ)での思い出を大切にします。」

『新しい靴を買わなくちゃ』と『ローマの休日』では、かなり映画の描き方が違うけれども、ストーリーの方向性は同じだと思う。

『新しい靴を買わなくちゃ』はちょっと表現が物足りなかったのではないかと思わずにはいられないが、それでも結末としては、 過去を引きずっていた中山美穂が、向井理と出会ったおかげで、一歩前に踏み出した、また、日本でのキャリアに悩んでいた向井理も、中山美穂と出会ったおかげで、一歩前に踏み出した、というようになっている。

こういうことは、きっと映画の外でもありえる。

だから、こんな映画のような出会いをもし現実で体験することになったらーここまでトントン拍子で上手くことが進むなんてありえないけれどもーその出会いを楽しんで、大切な時間として作り上げるのも、なかなかいいのかもしれない。




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