2017/02/01

シンガポールライフ2か月目:「シンガポールって、つまらなくない?」





「シンガポールってつまらなくない?」

こんなことを、そこらへんの誰かおっさんから聞かれたら、(何寝ぼけたことを言っているの?)と相手を睨みつけるかもしれないけれども、この質問を私に投げかけたのは、バリ島ウブドで会った、私の好みの見た目ドンピシャのイケメン過ぎるオーストラリア人男性である。

肩よりも長く伸ばした金髪に、青い目、身長は多分180cmは超えている。「1日にケーキを4個食べちゃった」などと可愛いことを言う彼は、「ヨガをしている」からなのか、体も引き締まっていて、長髪スタイルがよく似合う。髪は垂らしたままでも、結んでも、ちょっと雨に濡れた感じでも、何でもカッコイイ。でも、近寄りがたい雰囲気は全くなく、顔つきはすごく優しくて、笑顔もチャーミングで、とってもフレンドリー。声もしゃべり方も好き。

あー、もうドストライク♡

私がウブドで泊まることにした1泊2500円程度のゲストハウスのお隣さんだったのが彼。共有部分でたまたますれ違って、ちょっと会話をしたのが出会い。彼と別れた後はニヤニヤが止まらない私。英語話せて良かったー、と心底思う。

ラッキーなことに、彼とまた会った際に、近くにあるヴィーガンカフェに一緒に来る?と誘われる。もちろん、答えはイエス。

バイクをレンタルしているから、と、ヴィーガンカフェまで彼のバイクに乗っけてもらう。

「シンガポールに住んでいるの」と話すと、「どこのシンガポール?」と意味不明な質問をしてくる彼。

「えーっと、シンガポールは狭いから、シンガポールはシンガポールだけど・・・」とこちらも意味不明な回答をすると、

「前にソマセットに6ヶ月間いたんだよ」と彼。

ソマセットとは、高級ブランドショップやデパートが連なるシンガポールを代表するショッピングエリア。日本人にももちろん人気な場所。

「あ、そっか。えっと、私はイーストコーストっていう海岸沿いのところに住んでるの」

一方のイーストコーストエリアは、家族向けの落ち着いた雰囲気がある場所。イーストコーストエリアを誇りに思う私は、ここぞとばかりにイーストコーストのアピールをしたくなる。

バイクでの移動中、私は彼が私の予想に反し、アメリカ人ではなくオーストラリア人だと知り、日本にも旅行をしたことがあると知った。

行き先のカフェは本当にすぐ近くで、バイクに乗った時間はものの5分程度。それなら、歩いてこれるのに、なんて思う。

彼のオススメのヴィーガンカフェは『Seeds of Life』。店内の雰囲気は東洋スタイルだけれども、客層は95%欧米人。私たちはお座敷テーブルのところに隣同士に座る。飲み物の種類が豊富で、私はグリーンティーを頼む。それから、マンゴーチーズケーキも。彼はミソ・スープとグリーンスムージー。

さて、「何で6ヶ月間もシンガポールのソマセットにいたの?」と聞くと、若い頃にファッション関係の仕事で滞在したのだという。彼は19歳の時に学校を辞めて自分で仕事を始めたのだが、実はアーティストと生計を立てているのだった。それを知った時、妙に納得した。確かに、アーティストっぽい見た目かも。というか、髪も長くて、ヨギーニで、ビーガンフード好きで、タバコもお酒もなしなんて・・・ヒッピー系?

シンガポール以外にも上海で働いたこともあり、今回のバリ滞在は10日程度だが、数ヶ月後にまた戻ってきて、3ヶ月ほど滞在して友達と創作活動を行うのだという。「友達がバリでアパートを借りるんだけど、1ヶ月300ドル位しかかからないんだ。最近オーストラリアでアート以外にも音楽を作ったりしているんだけれども、売るための音楽をバリで作っていこうと思うんだ。今までは自分のために作っていたんだけれども。」

そこで今度は私の話をする番に。シンガポールではこういう業界の会社で働いているけれども、その前はインドに2年間強いて、その時はああいう業界の会社で働いていたということ。「僕のお姉さんが"ああいう業界"で働いてるけれども、面白くはないよね」と言われる。

それに対して私は、"Yeah....But it's for living abroad." (そうね、でも海外で生活する手段としてだから。)





シンガポールの話に戻り、彼は「ソマセットにいた時は若かったから、すごく楽しいと思ったけど、今考えると、シンガポールってつまらなくない?その、何ていうか・・・」

「物質的?ビジネスをするためだけの場所?無機質?不自然?」と私は間髪入れずに突っ込む。

「そう」と彼。

そう。それも私は最初不安に思っていたこと。

正直、シンガポールに住もうと考えたのは偶然だったし、そもそもシンガポールには眼中なんてコレッポチもなければ、インドとシンガポールだったらインドの方がまだいい、なんて思っていた。

歴史もない。文化もない。人工的な場所。

シンガポールって人工的な場所だな、とは今でも常に思う。勤務地のCBD(セントラル・ビジネス・ディストリクト)エリアは無機質なビルばかりで息が詰まりそう。いわゆるマリーナベイサンズやセントーサ島等の観光地も私は好きになれないので、なるべく近寄らないようにしている。

でも、日本人として生活をするにはインドよりも圧倒的にシンガポールの方が楽だし、健康的になった気がするので、インドを離れてシンガポールに来て良かった。

ただ、ややヒッピー系のアーティストがインスピレーションを得る場所としては、シンガポールは確かにつまらない。だから彼みたいにこんなにも格好いい人物をシンガポールではお目にかけることができない。

確かに、こんなハンサムガイに出会えない場所なんて、つまらないのかもしれないけれども・・・ それでも、「シンガポールって、つまらなくない?」という質問には私は答えなかった。

私はちょっと近くをブラブラするために先にレストランを後にし、ちょっとしてからゲストハウスに戻る。すると、後から戻ってきたイケメンオーストラリア人から、「友達とディナーの予定があるけど、一緒に来る?」とご親切に誘ってくれる。

もちろん!と即答。じゃあ、また後でね、と彼が自分の部屋に戻っていくのを見届けた後、嬉しすぎてベッドの上でピョンピョン飛び跳ねたい衝動をなんとか抑える。

『AKEMI Japanese Restaurant』に彼のバイクで向かうと、すでに彼の友達が2人いた。オーストラリア人男性のフォトグラファーと、ここウブドでレストランのソーシャルメディアオフィサーとして働く、ジャカルタ出身のインドネシア人女性。多分、この女性が私と同い年ぐらいなのだが、すごく可愛らしい美人で、つい見とれてしまうほど。

食後のケーキを食べに行こうかという話になったものの、私はお断り。イケメンオーストラリア人も私に遠慮して、ケーキのお誘いを断り、バイクで一緒にゲストハウスに戻る。

ゲストハウスに着けば、「じゃあ、お休み」と彼は彼の部屋へ、私は私の部屋に戻る。

「明日朝6時半に滝がある場所でメディテーションをするから、5時半頃に起きれたら一緒に行こう」と誘われたものの、翌日私は起きれず。

というよりも、座って目を閉じる瞑想が苦手なので、あえて起きず。

そんなこんなで、私の短いウブド旅行も終わりに近づき、シンガポールに戻るため、空港に向かう。

飛行機に乗り込むと、ものすごく不安になってくる。もし戻った時に、あのイケメンオーストラリア人に感化されたおかげで、シンガポールのことを嫌いになってたら、どうしようかと。

正直なところ、ウブドは残念ながら私にインスピレーションは与えてくれなかった。

インドからバリ島に来た時は、空も青く、牛肉も食べれ、それはそれで感動したけれども、今はもう違う。今回は、バイクと車の多さと空気の悪さ・騒音、ゴミ処理の問題にやたらと目がついてしまった。"神が宿る島"というブランドを掲げる割には、ものすごく世俗的に見えた。海に囲まれて緑豊かという恵まれた環境にあるお陰で、空も青いし、空気もまだインドよりはマシだけれども、これがインドのデリーみたいに内陸だったら、絶対デリーみたいに空気が悪くなっているはず。 観光業から収入を得るのであれば、もっと持続可能性のあるシステムを作らないと、豊かな自然はなくなってしまうし、観光業にも陰りが出てしまうのではないか。そんなことをつい思ってしまうのである。

多分、これは"インド後遺症"だ。インドの空気の悪さと天気の悪さに辟易していたので、人一倍、環境問題に敏感になってしまったのだろう。

あーあ、私もアーティストの目とフリースピリットを持っていればなぁ。バリ島が持つ精神を素直に受け入れられただろうに。そしたらもっと、あのイケメンオーストラリア人と仲良くなれたのに。

でも私はただのしがない会社員。生活のために働く人間。つまらないのは、シンガポールではなくて、私自身なのかも。

夜中にシンガポールの空港に着き、タクシーで家に戻る。タクシーのおっちゃんは、いつだってフレンドリーで話好きだ。ああ、家に戻ってきたなぁ、という感覚になる。

朝目覚めて、仕事の支度をする。今朝はヨガ教室には寄らないので、7時半頃に起きる。眼鏡はかけっぱなし、白いシャツのボタンを閉めて、ユニクロの紺のパンツを履く。

外に出て、バス停に向かい、バスを待つ。やっぱりシンガポールの方が空気は良い。

バスに乗り、職場がある中心街に向かう。職場の前の交差点の横断歩道が青になれば、一斉に人だかりが足早に行き来する。私もそのうちの一人。

これがいつもの平日。





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