2018/02/20

バスタブのない日本生活




かつてお湯に浸かる習慣がないインドに住んでいた私は、5分後にはお湯から水に変わるシャワー生活に耐えられず、ある日バスタブを購入する旅に出かけ、ついにバスタブのある優雅な堕落生活を送っていました。(←大げさな。)



それなのに、次に引っ越したシンガポールでは、バスタブのないストレス生活を送る羽目になったのです。しかも、シンガポールでも、シャワーのお湯はすぐに水に変わる状況。ポカポカお風呂とは無縁。優雅な堕落生活なんて、ありえません。


だから日本に帰ってきて、東京で一人暮らしをするにあたって、浴室にはこだわりたかったんです。猫足のバスタブとか、 ガラス張りのお風呂場があるお部屋を探したかったんです。


ガラス張りのお風呂場って、と笑っちゃうでしょ。でも、どうせ誰も家に招かないんだから、徹底的に、非効率的で非生産的な空間が欲しかったんです。


こういう猫足バスタブね


残念ながらタイミングが悪く、素敵な浴室のあるお部屋には出会えず。


その代わりに今住んでいるのが、バスタブのない、シャワーとトイレが一緒の空間になっている、地上1階のスタジオルーム。でも、部屋の作りに無駄がないので、意外と気に入ってます。


きっと私は、バスタブの中で過ごす時間よりも、無駄を省いた効率を選んだのでしょう。どうやら私は、東京のあくせくした環境に影響されたようです。


15平米もないお部屋なので、ベッドからキッチンまでの距離は1.5mで、ベッドからバスルームまでの距離は50cmほど。


家具は、まさかの鏡とベッドしか置いてなくて、テーブルも、ワードローブもありません。無駄に置くと、部屋が本当に狭くなるのです。だから、服は突っ張り棒を使った、完全な見せる収納だし、そもそも、服とか物とかもそんなにありません。靴は3足しかないし。


部屋のオブジェといえば、ベッド側の壁に掛けられた、シンガポールのラッフルズ・ホテルで販売されていた可愛いポストカード4枚(その内の1枚は、お友達から頂いたもの)と、ギリシャで買った手刺繍のクッション2枚、窓際に置かれた、愛読書のアントニオ・タブッキ著『インド夜想曲』
クシュワント・シン著『首都デリー』くらい。




テーブルがないので、誰も見ていないこと良いことに、食事はベッドの上で。エアコンの効きが悪くて、冬は部屋が寒いから、ベッドの外には出たくないしね。これだけは、かなり堕落している感じで、好き。


こんなイメージ(あくまでも理想)


肝心のお風呂は、どう長く入っても、15分が限界。マツコ・デラックスが、シャワーを1時間くらい浴びてるって、ある番組で言ってたけど、どうすればそんなことできるのかしら。それにしても、ずっとシャワーからお湯が出続ける日本って、素晴らしすぎるわ。


実は日本に帰ってきて、困っていることがあるんです。東京の空気の匂いに慣れないんです。特に、家の近くにある図書館の中とか、満員電車の中でのにおい。だから家に帰ったらすぐにシャワーを浴びるのですが、どうしても恋しいものがあるのです。


それは、インドのコスメブランド、Forest Essentialsのハニー&バニラの香りがするシャンプーとコンディショナー。日本では見つからない、香りが強いプロダクトで、定期的に使用すると、ずっと自分の髪から甘い香りがするので、香水のように愛用できるのです。


https://www.forestessentialsindia.com/


Forest Essentialsの商品は日本からでも個人購入できるので、買おうと思ったのですが、まさかそのハニー&バニラの香りのシャンプーが廃盤になったのか、1年ほど前から、ハニー&ムレティに変わったんです。


ムレティって何なのよ?バニラはどこへ消えてしまったの?


そんなわけで、もちろん私のシャワー室にはForest Essentialsは不在で、代わりにインドネシアで購入したハニーの香りのボディーソープさんがいるのですが、なかなか本領発揮してくれないのです。とにかく、私はハニー&バニラ・ロスなのです。


不幸中の幸いなのか、Forest Esssentialsのボディーソープでは、まだハニー&バニラの香りも販売されているので、ボディーソープだけでも輸入しようか真剣に検討中。


さて、髪を洗っても何の香りもしない寝ぼけた頭のまま、平日の朝、わざと遅めに家を出れば、ドアを開けた目の前に公園があって、そこでよくお年寄りの方を見かけます。


例えば平日の朝9時に、子供が遊ぶ公園で、白髪の長髪を一つに束ねた60は過ぎているであろう女性がベンチに座って、遠い目でタバコを吸っているんですよ。私はこういうシュールな光景を日本で見る機会が今までなかったので、急ぎ足で駅に向かいながらも、ついつい好奇心でそういう人たちをチラ見してしまいます。


公園が本来の機能を果たしているとわかるのは週末の特に夕方で、ここ最近は、どこかの小僧か小娘が吹く下手くそなトランペットの音を毎週聞かされています。(これが実は大人が吹いていたら、ちょっと笑えます。)上手に演奏ができるようになったら、誰がトランペットを吹いているのか、家のドアを開けて、公園を確認しようと思います。






2018/02/15

義理チョコと本命チョコの区別はハッキリさせておいたほうがいい:『未必のマクベス』




2月14日はバレンタイン・デー。


今この文章を書き始めた時点では、あと数時間で日付が変わってしまいます。


チョコレートをあげた方も、あげる相手がいなかった方も、もらえた方も、もらえなかった方も、もらえなくて寂しいくせに、「元々チョコには興味ねぇ」と粋がっている方も、本当に、チョコの存在に気に留めていない方も、いかがお過ごしでしたでしょうか?


チョコをくれる/あげる 相手がいなかったあなたへ。もしかしたら、そっちの方がいいかもしれないですよ。だって、未然に悲劇を防げたのかもしれないですから。

『未必のマクベス』早瀬耕 著




※ネタバレ含みます。

書店で大々的に宣伝されていた早瀬耕著の小説『未必のマクベス』。宣伝Popにはこんな風に書かれていました。


『単行本刊行時、こんなに素晴らしい物語を多くの方々にお届けできなくて大変申し訳ありませんでした。』
『初恋の人の名前を検索してみたことがありますか?』
『たとえその先に破滅があるとわかっていても、出会わない人生なんて選ぶことができない。』


ラブストーリーが好きな私は見事に心引かれたのです。そして、見事に騙されました。だって。。。


これは恋愛小説なんかじゃない!!!!!!


つい最近もCMで騙された体験をしましたが、早2度目です。そして、きっと周囲はそれは私の問題だと言うでしょう。「事前情報をちゃんと読み取っていない君が悪いでしょ」と。


確かに、 『未必のマクベス』は、よくよく考えてみたら、出版社はハヤカワ文庫だし、犯罪小説ってどこかの広告に書いてあったかもしれないし、本のタイトルも(シェークスピアのマクベスのような物語な感じだけど〜必ずしもそういうわけではないよーん)と示唆しているけど・・・そんなの気づかなかったもん!タイトルの意味なんて考えなかったもん!


だから、とりあえず(書店が謝るほどの恋愛小説)という認識で2月13日に本を読み始めて、夜更かしして14日のバレンタインデーを迎え、明け方に完読した頃、ハッキリわかりました。本当に、本の内容は、タイトルそのままだって。私が期待していた恋愛ネタとはジャンルが全く違うって。


『未必のマクベス』でも主要人物となった、シェイクスピアのマクベス登場人物は3人。マクベス、マクベス夫人、バンコー。


マクベスとなるのは、『未必のマクベス』の主人公・中井裕一。日本大手IT企業の香港法人の代表取締役に就任して以来、人の欲望・金・会社の陰謀が潜む巨大な事件に巻き込まれ、自らの意志とは関係なく、まるでシェイクスピアのマクベスのような状況に陥っていきます。


さて、シェイクスピアの『マクベス』では、悲劇は、マクベスが3人の魔女から「「万歳、いずれ王になるお方」と予言を託されてから始まります。


その予言を耳にしたマクベス夫人は、マクベスに現王を殺してしまえと、そそのかし、マクベスは王を殺して、自分が王座につきます。


ついでに、マクベスは暗殺者を仕向けて、友人のバンコーも殺します。なぜなら、魔女の余計な追加の予言によると、バンコーはマクベスの次期王となる父親らしいのです。残念ながら、バンコーの息子は暗殺者の手から逃げました。


その後、マクベス夫人は精神疾患の末自殺をし、マクベスは仇打ちで、帝王切開から生まれてきた者に殺され、次期王にはバンコーの息子が就任し、3人の魔女の予言通りになったのでした。


というお話。


魔女の予言と言えば・・・バリでこんなこともあった:
http://www.topsee-tips.com/2017/10/bali-palm-reading_29.html



で、現代版マクベスと呼ぶには違うけど、遠からずな『未必のマクベス』でも、殺人が何回も行われます。しかも、舞台は何百年前のスコットランドから、現代の国際金融都市香港に移り、王となるものが狙うのも領土ではなく会社になるわけですよ。


現代×金融都市×会社 っていうだけで、OL経験のある私は現実的すぎてゲンナリしてしまうのに、そこに殺人が追加されるんですよ。あぁ、会社がらみの殺人事件って、シェイクスピアの悲劇よりも悲惨だわ。


実は私、シンガポールに住んでいたことがあるのです。シンガポールも香港と同じで、一応国際金融都市と呼ばれているんですよね。私はシンガポールを舞台にした小説を探していて、橘玲著の『タックスヘイブン』という本に出会ったんです。 犯罪小説・経済小説だと知りながら読みましたが、それでも落ち込んじゃいましたもん。「シンガポールって怖い場所じゃん」って思いました。





『未必のマクベス』が好きな方は、きっと『タックスヘイブン』も好きになると思います。同じアジア舞台だし。スリル満点だし。でも、私は犯罪小説自体が好きになれません。


ここまで書いておいて、私がバレンタインデーのことを忘れていると思いのあなた、ご安心を。


今ちょうど、日本ではバレンタインデーは昨日のことになりましたが、ここでバレンタインデーのお話をしますね。


『未必のマクベス』の主人公・中井は、30代後半独身、年上の彼女持ちなのですが、心の中でずっと思い続けている女性がいるのです。


それは、20年ほど前、同じ高校の同級生で、3年間ずっとクラスが偶然一緒だった鍋島という女子。高校1年生のバレンタインデーの日に、中井は鍋島から2つのチョコレートを渡される。1つは、鍋島が友人から託されたという中井への本命チョコ。もう1つは鍋島からの「義理」チョコ。


実は、鍋島の義理チョコは本命チョコで、所謂女子の恥ずかしさにより思いを伝えられなかったのです。鍋島を気になりながらも、結局は最初から本命チョコと分かっていた鍋島の友人と付き合った中井なのでした。


若気の至りの思い出で終わればいいんですよ。でも、小説の世界だからそうはいかないんです。中井はなんだかんだ鍋島のことを忘れられないんです。その証拠が結構気持ち悪くて、パソコン上のパスワードを全て鍋島の名前に関する文字で設定してるんです。20年間も。


一方の鍋島はどこかに失踪中なのですが、あのバレンタインデーに気づいてもらえなかった気持ちを中井に気づいてもらって再会する日を待っているんです。


この再会への望みのせいで、中井は事件に巻き込まれ、端から見るととんだ目にあうわけです。


もちろん、ある物事が起こるのは偶然の重なりの上で、別にバレンタインデーのチョコを義理なのか本命なのか区別できなかったことが、事件の直接的なきっかけになるわけではないのですが、偶然の一つとして原因となったということならば、逆に言えば、その偶然の一つがなければ、その後の事件も起こらなかったわけです。


チョコレートを受け取ったあなた、今後の将来のために、念のため、白黒はっきりつけといたほうがいいですよ。特にあなたが想っている本命の相手からのチョコレートの場合は。


それから、チョコレートを義理だと嘘ついて、本命に渡したあなた。今からでも遅くないので、ケジメつけたほうがいいですよ。だって、自分が好きな人が、将来何十年にも渡って自分の名前をパスワードに設定するストーカーになったら、嫌じゃないですか。


何事も、念には念を。


なんてね。




P.S. 私がバレンタインデーを過ごしたい場所は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台となったイタリア・ベローナです。




2018/02/12

男からのこんなTinderメッセージは嫌だ




Twitterに彗星の如く現れた(そして消えたの?)「暇な女子大生さん」の影響で、今では多くの日本男性たちがマッチングアプリのTinder(ティンダー)を使っているようですね。

でも私(女)は、TinderがTwitterで話題になる前から使わせてもらってました。2015年くらいから。

個人的に使い勝手とか、自分とアプリの相性(?)は日本の大手マッチングアプリのPairs(ペアーズ)よりはTinderがなぜか昔から合うのです。

まぁ、これは偏見かもしれないですが、長々と自分語りする男に魅力を感じないのです。

Pairsって、自己紹介を大切にしてるじゃないですか。多分、皆さん忠実にテンプレートに沿って、一生懸命、仕事のこととか趣味とか自分の性格について書いているんでしょうね。

でも、ウザいー!!と思ってしまうんです。ごめんなさいm(__)m

なんか、ものすごくコダワリがあってメンドくさいタイプなのかなー、とか、そんな自己アピールして実際とのギャップが激しかったらどうするのかなー、と、物凄く日本的な考え方をしてしまうのです。はい。

なので、語る男が多いPairsよりも、顔(もしくは体?)で勝負する男が多そうなTinderの方が私は好きでした。

好きでした、という過去形←

Tinderは登録したり解除したりを繰り返していたのですが、最近は全然右スワイプしたいと思うイケメンがいなくてガッカリしております。

それに、学歴とか勤務先をこれ見よがしに表示する男や、趣味について長々と書いている男も多く、もうウンザリです。

学歴・職歴に頼る男には興味がないので、よほどイケメンでない限り、ビヨンセ並みに、To the left, to the left(左へ、左へ)です。

ビヨンセ『Irreplaceable』



あと、胸がはだけてる写真の人も、To the left, to the leftです。素晴らしいマッチョでもね。

2・3年前は、自分と同じ境遇の海外経験者とか意外と多かったので、そういう人たちに対してLikeをし、何人かと会ったりしました。そのうち、普通に良い人だったのは、2人かな。普通に、っていうのは、害がないってこと。

今はあまり海外経験者が画面に登場することが少なくて、出てきてもなんか普通のおじさん、って感じなので、無難に若いイケメンを探しています。

それでもなかなかいないので、清潔感のある、"無難な"男性とマッチします。

で、今回のタイトルへと繋がるのです・・・うっ、ふっ、ふ。

 まぁ、最初に私からメッセージを送ればこんなことにはならないかもしれませんが、こんなメッセージを男性から最初に送られると、即解除します。

①「こんにちは」「初めまして、○○です」系の挨拶。

これは・・・私個人の問題なのかもしれないですが。。

挨拶自体は確かにいいと思うんですが、挨拶だけのメッセージを送るのって、無駄じゃないですか?

知り合いから挨拶だけのメッセージをもらうのだって、私は嫌です。ちょっと私の脳が男っぽいのでしょうか。

朝にLineで一言、「おはよう」とかきた時に、だから何?って思ってしまうタイプには、この挨拶メッセージは無駄以外の何物でもないです。

お前はインド人か!ってツッコミたくなります。

なんで急にインドが出てきたか知りたい方は→
http://www.topsee-tips.com/2016/01/uncomfortable-expression.html

 ②「何目的で使ってるんですか?」と質問してくるメッセージ

最初のメッセージでも、途中のメッセージでも嫌です。あと、「遊びたいんですか?」とか「遊びましょー」とか系もここに含めます。

「何目的?」って聞く人って、「アレ目的」って言ってほしいんですよね、きっと。私はソレ目的でもないし、もしソレ目的だったら、それこそ、マッチョな男にしか右スワイプしないと思います。無難な見た目のあなたになんか・・・(これ以上は放送禁止♡)


③長文メッセージ

幸いなことに、私は一度も長文メッセージをもらったことはないです。長文を送ってきそうな人とはまずマッチしないので、それは良いことです。でも、もしもらったら・・・即サヨナラですね。

 最近は①②が多くて、実際会ってもいいかなと思う人が全くいないので、一旦は退会しました。まぁ、また気が向いたら登録して、幻滅して退会して・・・の繰り返しになりそうですが、頑張って現実世界で良い人探します!


(それが一番ですよね、やっぱり。。。)


ちなみに。


『暇なJD・三田まゆ~今夜、私と“優勝”しませんか ~』というドラマが放送されていたみたいですね。話題だと耳に入ってこなかったので、予想では、面白くなかったのでしょう。。

『Tinder日記』みたいな、実際Tinderであった男の生態をオムニバス式でドラマ化したら面白いと思うのですが。監修は、東京カレンダーさんで。

東京カレンダーのファンです→
http://www.topsee-tips.com/2017/11/walking-tour-with-shoshaman.html

実は、インドでTinderを通してのダメ男たちとの出会いを超ショートストーリーでまとめたYouTube動画があるのですが、爆笑ものです。

『Tinder in India』



タイトルは、『インド生活の一幕:Tinder in India』。実話を元にしたストーリー。

インド・ムンバイ在住のリカ、現在独身。「友達に勧められたから、面白い人に出会えたら良いなと思って。」

そして彼女はTinderを通して次々と男性とデートをするのですが。。。出会うのはこんなダメ男たち。

①Dad Man - パパの男:パパの自慢ばかりするダメ男。デートにはパパが隣に・・・!

②Chest Hair Man - 胸毛の男:「胸毛を剃ってメッセージを書いた(文字を書いた)んだ」という謎の男。

③Bengali Man - ベンガル男(ベンガル=インドの地域名):「人生は無意味なんだ」と語る根暗男。

④Thief Man - 盗人男:リカの携帯を盗む。

⑤Airline Man - フライトアテンダント男: フライトアテンダントのくせに、ヘルシンキがどこか知らない

⑥Impossible to Explain Man - 説明不可能男: (最高の名付け方!とにかく動画をみてください!)

⑦ Punjabi Man - パンジャブ男(パンジャブ=インドの地域名):マシンガントークが止まらなくて、リカも引いてる。

⑧ Mutual Fund Man - 投資信託男:デート中に投資信託を勧める


ダメ男たちに幻滅したリカ。あー、もう嫌だわー、ってところに・・・


⑨ Good Man - 良い男:「僕の人生はつまんないさ。でも、君のはすごく面白く見えるよ。君の話を聞かせてくれ。」

女性の話を聞いてくれる男が、良い男、っていうオチですね。

世界共通なのでした。






2018/02/11

『ラ・ラ・ランド』のフィナーレのような感動を:"ど田舎"が舞台の映画『SR サイタマノラッパー』





※ネタバレ含むのでご注意を。


音楽をテーマにした映画が好き、さらにサクセスストーリーが好きな私は、Amazon Prime上で最近追加された『SR サイタマノラッパー』という、聞いたこともない、でも、どうやら公開時には自主映画として流行ったらしい映画をなんとなく観てみたのです。


だって、ポスターには、『アメリカまで、8000マイルー』と書かれていて、予告編でも『サイタマの田舎でラッパーを目指す青年たち』というキャッチコピーが出てきたり、登場人物が『ここサイタマから世界に向けてソウル・トゥ・ソウル メッセージ送ってんだよ』とか言っていたんですよ。しかも軽やかなヒップホップ音楽に乗せて。


映画『SR サイタマノラッパー』予告編



だから、"ダサイタマ"で活動しているしがないラッパーたちが、映画の最後にはアメリカのイベントなんかに参加して、 自分たちの実力を見せつける、素晴らしく豪華なエンディングを期待したわけです。


で。。。


見事に裏切られました。


予備知識がない状態で映画を観ると、こういうことが起こってしまうんですね・・・と思うほどの衝撃。


でも、"豪華"とは程遠い、『SR サイタマノラッパー』のエンディングは、まさかのあのロマンティックなエンディングで観客を感動させた(あれをどう思わなかった人もいるらしいけど・・・無視!)『ラ・ラ・ランド』を彷彿させるような・・・


大丈夫か、私?!


とりあえず、自分を納得させるように、つらつらと『SR サイタマノラッパー』について書いていきます。


【あらすじ】
※完全ネタバレ注意。
※ネタバレ嫌な方は、先に映画を観ましょう。




ダサイタマの"超ど田舎"、若者にとっては閉鎖的な場所フクヤで、ニート中の若者、かつ、ぽっちゃり君のIKKU(イック)は、男子6人で構成されたヒップホップグループ“SHO-GUNG”のメンバーとして活動、ラッパーとして活躍することを夢見ていた。


でも、この"SHO-GUNG"メンバー、各それぞれアルバイトや家業など日々の生活の稼ぎに重きを置いて、本格的な活動はしていない様子。ニートのIKKUだけは暇だからか、それとも一応本気だからか、「ライブを開こうよ!」とメンバーに提案し、主に一人で準備を始める。"フカヤ伝説のラッパー"と言われた病弱な先輩に音楽制作をお願いしたり、自分で詩を書いてみたり。市役所が開催した『若者との交流会』に、"SHO-GUNG"メンバーのTOM(トム)とMIGHTY(マイティー)と共に参加しラッパーを披露したり。(でも実は、その交流会は、ただの安定した職を持つ大人たちのフリーター・ニートの若者たちへの批判の場であったというオチ。)


ある日、イックとトムの元同級生の女子、千夏が地元フクヤに本屋の店員として戻ってくる。実はこの元同級生は、高校中退した後、東京に上京、AV女優になっていた。そのAV女優がフクヤに戻ったとなり、コミュニティーが狭い地域では、ちょっとした話題に。"SHO-GUNG"のトムとマイティー以外も興味を示し、元同級生だったイックに千夏と引きあわせるようにせがむ。


実は千夏が好きだったイック、珍しくメンバーに歯向かう。そして実はメンバー内にもカースト制があったようで(イックとトムが下に見られていた)、これを機にメンバー内の亀裂が明らかに。急展開な仲間割れの後、イックとトム以外のメンバーはプロを目指して東京に上京する。


千夏もフクヤに見切りをつけ、またどこかへ旅立ってしまった。 残されたイックとトム。どうやらトムは夢を諦めてしまった様子。2人も離れ離れになった。


そしてどれだけの日数が経ったかは定かではないが、イックは居酒屋でアルバイトを始めた。その居酒屋にやってきた4人組の客の中になんとトムもいた。


嫌々仕事帰りに同僚に誘われて居酒屋に来た様子のトムに気づいたイック。そしてイックに気づいて気まずそうなトム。それに気がつかずにビールを頼むトムの同僚たち。


ビールの注文を他スタッフに伝えるため後ろに引っ込んだイックだが、ここでまさか、まさか・・・


ラップを歌い始める。


トムに訴えるため。「夢は捨ててないぞ」と。


ざわざわするお客さんたち。俯いたままのトム。でも、まさか、まさか、「聞いてんのか、トム」と歌うイックに反論する形で・・・トムもラップを歌う。「腐った夢、格好悪い。」


「めげるな」とイック。どうしてもまたトムと夢を追いたいらしい。


「SHO-GUN 勝負中 今はネクストステージ行く途中。。。無視するな!カモン、トム!」と。(ラップで。居酒屋で。)


遂に、イックの方を振り向くトム。


さて、ここで出したトムの答えは・・・


と、いいところで、エンドロール。


あー、不覚にも長々と完全ネタバレをしてしまった。。汗


2009年に公開され、数々の映画祭で受賞を果たしたこの映画。裏情報なしで観てみると、ツッコミどころは多々あります。


CMでは編集のおかげでテンポよく話が展開している感じだったけれど、実際はなんか間延びしている感じがあるのです。シーンごとの強弱がないというか。シーンが変わる時の切り替えもちょっと不自然かなぁと思ったり。


致命的なのは、登場人物が何言ってるのかよくわからない箇所が多々あったこと。特にラップのシーンで何言っているのかわからなかった。


そして何よりも!


CMからの勝手な先入観で、絶対に最後はアメリカでラップを披露するシーンがあると信じていた私は映画終了10分前になっても主人公IKKUが成功する様子もない、むしろ夢破れてる感じで、どうアメリカに繋げるのだろうと不思議で仕方がなかったところに、あの居酒屋シーンですよ。


ずっこけました。(←いや、それはあなたの勝手な妄想のせいでしょ、と言われても仕方ないです。)


予想外の展開にあっけを取られた上に、イックのラップも何言ってるかよく理解できず、(「カモン、トム」が「カトン(=シンガポールにある地域名」)に聞こえた。)最初は「ほー」というなんとも言えない感想で映画を観終わったんですね。


でも、なんかモヤモヤして、翌日もう1回、居酒屋シーンを見たのです。


もう、号泣。


(※ここからは、あなたがすでに『SR サイタマノラッパー』を観た前提で感想言います。)


どの登場人物に共感を寄せるかで、受け止め方って色々違ってくるかと思いますが、私は最後のシーンでは、イックではなくて、トムに共感してしまったんですね。


イックは結構真っ直ぐで良い子なんです。おデブちゃんでも、ニートでも、ラッパーになるための努力もそんなにしてなくても、色々葛藤していても、なぜか前向きで希望を捨てていないのです。そのひたむきさに、おばちゃん、感動。


一方のトム。彼は意外と世間体を気にしているタイプなんですね。例えば、市役所関連イベントでジジババたちからイジワルな質問をされている時、ちょっと自分はマトモだと思ってほしくて、「バイトだけじゃなくて、個人的に株の勉強をしている」なんて嘘ついちゃったりして。なんとなく世間に馴染んで、"一般ピープル"として生きていこうと努力する居酒屋シーンでの姿が本当に痛々しいのです。


多分、夢諦めちゃった人、諦めかけてる人にとっては、あの居酒屋シーンではトムに投影しちゃうのではないでしょうか。そこで、イックにカツを入れられるのです。


1回目は特に感想がなかったのに、2回目で号泣するのは初めての体験です。


で、号泣しながら、『ラ・ラ・ランド』のラストシーンを思い出したのです。


女優を目指したミアと、ジャズピアニストを目指したセブ。2人は恋に落ち、互いに些細あいながら、夢を叶えるつもりが、すれ違いで別々の人生を送ることに。


最高なことに、2人とも自分の夢を叶えることができた。ミアは素敵な家庭も持った。でも、ある日2人は再会し、"2人であのまま一緒にいられたら、そうなっていたかもしれない人生"に切なくなってしまう(そして観客は号泣してしまう)、あのシーン。


ハリウッドとサイタマの格差。成功者と、何も成し遂げていない若者の格差があるものの、何か共通点がある気がするのです。


それはきっと、夢を叶えても、叶えられなくても、何かしらの心のつかえが存在すると『SR サイタマノラッパー』も 『ラ・ラ・ランド』も教えてくれたような気がするのです。


最後、駆け足になりましたが。


こんなことをトーキョーの片隅で、バレンタイン間近に一人考えているのでした。



『ラ・ラ・ランド』をレンタル視聴するなら:






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