2018/02/15

義理チョコと本命チョコの区別はハッキリさせておいたほうがいい:『未必のマクベス』




2月14日はバレンタイン・デー。


今この文章を書き始めた時点では、あと数時間で日付が変わってしまいます。


チョコレートをあげた方も、あげる相手がいなかった方も、もらえた方も、もらえなかった方も、もらえなくて寂しいくせに、「元々チョコには興味ねぇ」と粋がっている方も、本当に、チョコの存在に気に留めていない方も、いかがお過ごしでしたでしょうか?


チョコをくれる/あげる 相手がいなかったあなたへ。もしかしたら、そっちの方がいいかもしれないですよ。だって、未然に悲劇を防げたのかもしれないですから。

『未必のマクベス』早瀬耕 著




※ネタバレ含みます。

書店で大々的に宣伝されていた早瀬耕著の小説『未必のマクベス』。宣伝Popにはこんな風に書かれていました。


『単行本刊行時、こんなに素晴らしい物語を多くの方々にお届けできなくて大変申し訳ありませんでした。』
『初恋の人の名前を検索してみたことがありますか?』
『たとえその先に破滅があるとわかっていても、出会わない人生なんて選ぶことができない。』


ラブストーリーが好きな私は見事に心引かれたのです。そして、見事に騙されました。だって。。。


これは恋愛小説なんかじゃない!!!!!!


つい最近もCMで騙された体験をしましたが、早2度目です。そして、きっと周囲はそれは私の問題だと言うでしょう。「事前情報をちゃんと読み取っていない君が悪いでしょ」と。


確かに、 『未必のマクベス』は、よくよく考えてみたら、出版社はハヤカワ文庫だし、犯罪小説ってどこかの広告に書いてあったかもしれないし、本のタイトルも(シェークスピアのマクベスのような物語な感じだけど〜必ずしもそういうわけではないよーん)と示唆しているけど・・・そんなの気づかなかったもん!タイトルの意味なんて考えなかったもん!


だから、とりあえず(書店が謝るほどの恋愛小説)という認識で2月13日に本を読み始めて、夜更かしして14日のバレンタインデーを迎え、明け方に完読した頃、ハッキリわかりました。本当に、本の内容は、タイトルそのままだって。私が期待していた恋愛ネタとはジャンルが全く違うって。


『未必のマクベス』でも主要人物となった、シェイクスピアのマクベス登場人物は3人。マクベス、マクベス夫人、バンコー。


マクベスとなるのは、『未必のマクベス』の主人公・中井裕一。日本大手IT企業の香港法人の代表取締役に就任して以来、人の欲望・金・会社の陰謀が潜む巨大な事件に巻き込まれ、自らの意志とは関係なく、まるでシェイクスピアのマクベスのような状況に陥っていきます。


さて、シェイクスピアの『マクベス』では、悲劇は、マクベスが3人の魔女から「「万歳、いずれ王になるお方」と予言を託されてから始まります。


その予言を耳にしたマクベス夫人は、マクベスに現王を殺してしまえと、そそのかし、マクベスは王を殺して、自分が王座につきます。


ついでに、マクベスは暗殺者を仕向けて、友人のバンコーも殺します。なぜなら、魔女の余計な追加の予言によると、バンコーはマクベスの次期王となる父親らしいのです。残念ながら、バンコーの息子は暗殺者の手から逃げました。


その後、マクベス夫人は精神疾患の末自殺をし、マクベスは仇打ちで、帝王切開から生まれてきた者に殺され、次期王にはバンコーの息子が就任し、3人の魔女の予言通りになったのでした。


というお話。


魔女の予言と言えば・・・バリでこんなこともあった:
http://www.topsee-tips.com/2017/10/bali-palm-reading_29.html



で、現代版マクベスと呼ぶには違うけど、遠からずな『未必のマクベス』でも、殺人が何回も行われます。しかも、舞台は何百年前のスコットランドから、現代の国際金融都市香港に移り、王となるものが狙うのも領土ではなく会社になるわけですよ。


現代×金融都市×会社 っていうだけで、OL経験のある私は現実的すぎてゲンナリしてしまうのに、そこに殺人が追加されるんですよ。あぁ、会社がらみの殺人事件って、シェイクスピアの悲劇よりも悲惨だわ。


実は私、シンガポールに住んでいたことがあるのです。シンガポールも香港と同じで、一応国際金融都市と呼ばれているんですよね。私はシンガポールを舞台にした小説を探していて、橘玲著の『タックスヘイブン』という本に出会ったんです。 犯罪小説・経済小説だと知りながら読みましたが、それでも落ち込んじゃいましたもん。「シンガポールって怖い場所じゃん」って思いました。





『未必のマクベス』が好きな方は、きっと『タックスヘイブン』も好きになると思います。同じアジア舞台だし。スリル満点だし。でも、私は犯罪小説自体が好きになれません。


ここまで書いておいて、私がバレンタインデーのことを忘れていると思いのあなた、ご安心を。


今ちょうど、日本ではバレンタインデーは昨日のことになりましたが、ここでバレンタインデーのお話をしますね。


『未必のマクベス』の主人公・中井は、30代後半独身、年上の彼女持ちなのですが、心の中でずっと思い続けている女性がいるのです。


それは、20年ほど前、同じ高校の同級生で、3年間ずっとクラスが偶然一緒だった鍋島という女子。高校1年生のバレンタインデーの日に、中井は鍋島から2つのチョコレートを渡される。1つは、鍋島が友人から託されたという中井への本命チョコ。もう1つは鍋島からの「義理」チョコ。


実は、鍋島の義理チョコは本命チョコで、所謂女子の恥ずかしさにより思いを伝えられなかったのです。鍋島を気になりながらも、結局は最初から本命チョコと分かっていた鍋島の友人と付き合った中井なのでした。


若気の至りの思い出で終わればいいんですよ。でも、小説の世界だからそうはいかないんです。中井はなんだかんだ鍋島のことを忘れられないんです。その証拠が結構気持ち悪くて、パソコン上のパスワードを全て鍋島の名前に関する文字で設定してるんです。20年間も。


一方の鍋島はどこかに失踪中なのですが、あのバレンタインデーに気づいてもらえなかった気持ちを中井に気づいてもらって再会する日を待っているんです。


この再会への望みのせいで、中井は事件に巻き込まれ、端から見るととんだ目にあうわけです。


もちろん、ある物事が起こるのは偶然の重なりの上で、別にバレンタインデーのチョコを義理なのか本命なのか区別できなかったことが、事件の直接的なきっかけになるわけではないのですが、偶然の一つとして原因となったということならば、逆に言えば、その偶然の一つがなければ、その後の事件も起こらなかったわけです。


チョコレートを受け取ったあなた、今後の将来のために、念のため、白黒はっきりつけといたほうがいいですよ。特にあなたが想っている本命の相手からのチョコレートの場合は。


それから、チョコレートを義理だと嘘ついて、本命に渡したあなた。今からでも遅くないので、ケジメつけたほうがいいですよ。だって、自分が好きな人が、将来何十年にも渡って自分の名前をパスワードに設定するストーカーになったら、嫌じゃないですか。


何事も、念には念を。


なんてね。




P.S. 私がバレンタインデーを過ごしたい場所は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台となったイタリア・ベローナです。




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