2018/02/11

『ラ・ラ・ランド』のフィナーレのような感動を:"ど田舎"が舞台の映画『SR サイタマノラッパー』





※ネタバレ含むのでご注意を。


音楽をテーマにした映画が好き、さらにサクセスストーリーが好きな私は、Amazon Prime上で最近追加された『SR サイタマノラッパー』という、聞いたこともない、でも、どうやら公開時には自主映画として流行ったらしい映画をなんとなく観てみたのです。


だって、ポスターには、『アメリカまで、8000マイルー』と書かれていて、予告編でも『サイタマの田舎でラッパーを目指す青年たち』というキャッチコピーが出てきたり、登場人物が『ここサイタマから世界に向けてソウル・トゥ・ソウル メッセージ送ってんだよ』とか言っていたんですよ。しかも軽やかなヒップホップ音楽に乗せて。


映画『SR サイタマノラッパー』予告編



だから、"ダサイタマ"で活動しているしがないラッパーたちが、映画の最後にはアメリカのイベントなんかに参加して、 自分たちの実力を見せつける、素晴らしく豪華なエンディングを期待したわけです。


で。。。


見事に裏切られました。


予備知識がない状態で映画を観ると、こういうことが起こってしまうんですね・・・と思うほどの衝撃。


でも、"豪華"とは程遠い、『SR サイタマノラッパー』のエンディングは、まさかのあのロマンティックなエンディングで観客を感動させた(あれをどう思わなかった人もいるらしいけど・・・無視!)『ラ・ラ・ランド』を彷彿させるような・・・


大丈夫か、私?!


とりあえず、自分を納得させるように、つらつらと『SR サイタマノラッパー』について書いていきます。


【あらすじ】
※完全ネタバレ注意。
※ネタバレ嫌な方は、先に映画を観ましょう。




ダサイタマの"超ど田舎"、若者にとっては閉鎖的な場所フクヤで、ニート中の若者、かつ、ぽっちゃり君のIKKU(イック)は、男子6人で構成されたヒップホップグループ“SHO-GUNG”のメンバーとして活動、ラッパーとして活躍することを夢見ていた。


でも、この"SHO-GUNG"メンバー、各それぞれアルバイトや家業など日々の生活の稼ぎに重きを置いて、本格的な活動はしていない様子。ニートのIKKUだけは暇だからか、それとも一応本気だからか、「ライブを開こうよ!」とメンバーに提案し、主に一人で準備を始める。"フカヤ伝説のラッパー"と言われた病弱な先輩に音楽制作をお願いしたり、自分で詩を書いてみたり。市役所が開催した『若者との交流会』に、"SHO-GUNG"メンバーのTOM(トム)とMIGHTY(マイティー)と共に参加しラッパーを披露したり。(でも実は、その交流会は、ただの安定した職を持つ大人たちのフリーター・ニートの若者たちへの批判の場であったというオチ。)


ある日、イックとトムの元同級生の女子、千夏が地元フクヤに本屋の店員として戻ってくる。実はこの元同級生は、高校中退した後、東京に上京、AV女優になっていた。そのAV女優がフクヤに戻ったとなり、コミュニティーが狭い地域では、ちょっとした話題に。"SHO-GUNG"のトムとマイティー以外も興味を示し、元同級生だったイックに千夏と引きあわせるようにせがむ。


実は千夏が好きだったイック、珍しくメンバーに歯向かう。そして実はメンバー内にもカースト制があったようで(イックとトムが下に見られていた)、これを機にメンバー内の亀裂が明らかに。急展開な仲間割れの後、イックとトム以外のメンバーはプロを目指して東京に上京する。


千夏もフクヤに見切りをつけ、またどこかへ旅立ってしまった。 残されたイックとトム。どうやらトムは夢を諦めてしまった様子。2人も離れ離れになった。


そしてどれだけの日数が経ったかは定かではないが、イックは居酒屋でアルバイトを始めた。その居酒屋にやってきた4人組の客の中になんとトムもいた。


嫌々仕事帰りに同僚に誘われて居酒屋に来た様子のトムに気づいたイック。そしてイックに気づいて気まずそうなトム。それに気がつかずにビールを頼むトムの同僚たち。


ビールの注文を他スタッフに伝えるため後ろに引っ込んだイックだが、ここでまさか、まさか・・・


ラップを歌い始める。


トムに訴えるため。「夢は捨ててないぞ」と。


ざわざわするお客さんたち。俯いたままのトム。でも、まさか、まさか、「聞いてんのか、トム」と歌うイックに反論する形で・・・トムもラップを歌う。「腐った夢、格好悪い。」


「めげるな」とイック。どうしてもまたトムと夢を追いたいらしい。


「SHO-GUN 勝負中 今はネクストステージ行く途中。。。無視するな!カモン、トム!」と。(ラップで。居酒屋で。)


遂に、イックの方を振り向くトム。


さて、ここで出したトムの答えは・・・


と、いいところで、エンドロール。


あー、不覚にも長々と完全ネタバレをしてしまった。。汗


2009年に公開され、数々の映画祭で受賞を果たしたこの映画。裏情報なしで観てみると、ツッコミどころは多々あります。


CMでは編集のおかげでテンポよく話が展開している感じだったけれど、実際はなんか間延びしている感じがあるのです。シーンごとの強弱がないというか。シーンが変わる時の切り替えもちょっと不自然かなぁと思ったり。


致命的なのは、登場人物が何言ってるのかよくわからない箇所が多々あったこと。特にラップのシーンで何言っているのかわからなかった。


そして何よりも!


CMからの勝手な先入観で、絶対に最後はアメリカでラップを披露するシーンがあると信じていた私は映画終了10分前になっても主人公IKKUが成功する様子もない、むしろ夢破れてる感じで、どうアメリカに繋げるのだろうと不思議で仕方がなかったところに、あの居酒屋シーンですよ。


ずっこけました。(←いや、それはあなたの勝手な妄想のせいでしょ、と言われても仕方ないです。)


予想外の展開にあっけを取られた上に、イックのラップも何言ってるかよく理解できず、(「カモン、トム」が「カトン(=シンガポールにある地域名」)に聞こえた。)最初は「ほー」というなんとも言えない感想で映画を観終わったんですね。


でも、なんかモヤモヤして、翌日もう1回、居酒屋シーンを見たのです。


もう、号泣。


(※ここからは、あなたがすでに『SR サイタマノラッパー』を観た前提で感想言います。)


どの登場人物に共感を寄せるかで、受け止め方って色々違ってくるかと思いますが、私は最後のシーンでは、イックではなくて、トムに共感してしまったんですね。


イックは結構真っ直ぐで良い子なんです。おデブちゃんでも、ニートでも、ラッパーになるための努力もそんなにしてなくても、色々葛藤していても、なぜか前向きで希望を捨てていないのです。そのひたむきさに、おばちゃん、感動。


一方のトム。彼は意外と世間体を気にしているタイプなんですね。例えば、市役所関連イベントでジジババたちからイジワルな質問をされている時、ちょっと自分はマトモだと思ってほしくて、「バイトだけじゃなくて、個人的に株の勉強をしている」なんて嘘ついちゃったりして。なんとなく世間に馴染んで、"一般ピープル"として生きていこうと努力する居酒屋シーンでの姿が本当に痛々しいのです。


多分、夢諦めちゃった人、諦めかけてる人にとっては、あの居酒屋シーンではトムに投影しちゃうのではないでしょうか。そこで、イックにカツを入れられるのです。


1回目は特に感想がなかったのに、2回目で号泣するのは初めての体験です。


で、号泣しながら、『ラ・ラ・ランド』のラストシーンを思い出したのです。


女優を目指したミアと、ジャズピアニストを目指したセブ。2人は恋に落ち、互いに些細あいながら、夢を叶えるつもりが、すれ違いで別々の人生を送ることに。


最高なことに、2人とも自分の夢を叶えることができた。ミアは素敵な家庭も持った。でも、ある日2人は再会し、"2人であのまま一緒にいられたら、そうなっていたかもしれない人生"に切なくなってしまう(そして観客は号泣してしまう)、あのシーン。


ハリウッドとサイタマの格差。成功者と、何も成し遂げていない若者の格差があるものの、何か共通点がある気がするのです。


それはきっと、夢を叶えても、叶えられなくても、何かしらの心のつかえが存在すると『SR サイタマノラッパー』も 『ラ・ラ・ランド』も教えてくれたような気がするのです。


最後、駆け足になりましたが。


こんなことをトーキョーの片隅で、バレンタイン間近に一人考えているのでした。



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